「経済ってそういうことだったのか会議」佐藤雅彦・竹中平蔵
初版は2000年4月。当時は、興味を持ったが、購入しなかった。最近、母親の書棚にあるのを見つけて読んだ。
(1)株式会社のはじまりは東インド会社(これは知っていた)、当時、ヨーロッパには、東インド会社はいくつもあった(これは知らなかった)。当時の株式会社は1プロジェクトで終わり(これも初耳)。つまり、船を仕立てて、例えば香辛料を仕入れに行く、その資金を何人かが負担する。無事香辛料を仕入れて船が帰ってくれば、それを売った利益を出資比率に応じてシェアする。船が帰って来れなければ、出資した資金は無駄になる。
そのうち、都度出資を募るのも面倒なので、継続的な事業にしようという話になる。継続的な事業になると、途中でやーめたという人が出る。なので、権利を売買する仕組みが生まれる。なるほどなぁ。
(2)預金金利が3%のとき、株式配当の利回りが5%で、安全な投資なら、資金は株式に流れる。ただ、株式に資金が回ると、株価が上がる。仮に株価が2倍になれば、利回りは2.5%になるから、資金は預金に回る。預金に回ると株価が下がるから、株式の利回りは上がってくる。そうやって、マーケットはバランスが取れるようになっている。なるほどなぁ。
(3)民主主義は税金の問題からはじまった。例えば、王様のこづかいと国家財政は区別がない。すると王様は必ず無駄遣いをする。赤字になる、税金を上げるということになる。そんなことが繰り返されるとたまらないから、税金の使いみちについては、払う側にも意見をさせろということになっていく。王様が何を根拠に税を集めるか。安全保障。なるほどなぁ。
(4)税が社会に与える影響=チャウシェスクの子供たち。国力は人口だと信じたルーマニアの独裁者・チャウシェスク大統領は、たくさん子供を産んだ人は無税として、逆に奨励金を出した。子供が増えた。政権が変わり、この制度がなくなると、子供を育てられない親が子供を捨てた。佐藤雅彦さんがブカレストで目撃した姉弟の話は泣ける。中国の一人っ子政策によって、戸籍に載せられない子供が生まれた。戸籍に載らない子供は教育が受けられないという悲劇についても考えさせられた。
(5)ジレットと言えば、カミソリを売っている地味な会社というイメージが私にあるけれど、カミソリは30%弱しかない。時価総額はGEを抜いている。以前は百円ライターのビックを持っていたけれど、ビックのライターで煙草に火をつけているのが増えそうもないから手放した。どうしてカミソリを手放さないかというと、ジレットの筆頭株主・ウォーレン・バフェットは「寝る前に今この瞬間も人々の髭が伸びていると想像すると、安眠できる」と言っているのだそうだ。なるほどなぁ。
(6)資生堂が10とするとカネボウは1くらいしか売上がなかった。けれども資生堂が春のキャンペーンで口紅をやると、カネボウも口紅をやる。秋に資生堂がアイシャドウをやるとカネボウもアイシャドウをやる。そうすると一般の人には、資生堂とカネボウが10対10の会社に見えてくる。そのうち売上も10対3とか4になってくる。なるほどなぁ。
という具合になるほどなぁと思ったことがたくさんあった。
私は経済というものを学んだことはないけれど、いくつかの原理原則を知ると、なんだか全体が分かったような気分になった。
この本を今さら読んでみようと思ったのは、小泉改革の旗振り役をしている竹中平蔵さんという人がどんなことを考えているのか知りたいと思ったことがある。
この件に関して、読了して思ったのは、やはり竹中さんは、小泉人気を背景に壮大なシミュレーションをやっているのだということだ。
竹中さんは参議院議員になったけれど、未だに議員というより学者だ。そういう議員がいてもいいと思うけれど、そういう人が政策を左右するようなポジションにいるということは、歓迎すべきことではないように思う。それは占い師が政策を左右するポジションにいるようなものだと思う。
読み込み不足だったら謝るけれど、この本の中で、佐藤雅彦さんはチャウシェスクの子供たちの話をした。臨場感があった。感情を動かされた。だけど、竹中平蔵さんの話は寓話的で、臨場感がない。腑に落ちるけど、感情が動かない。佐藤さんがCMプランナーとして相手にしていたのは大衆だったけど、竹中さんが相手をしているのは無機質なもののように思えた。それは竹中さんが選挙民を持たない(地元を持たない)比例代表の参議院議員であることと無縁ではないと思う。
アメリカに住民票を移して徴税を免れているという疑惑をはじめ、説明できない(していない)いくつかの問題を抱えていることも国会議員としてどうかと思う。
人は遺伝子の乗り物だ。繁殖するために私があるとすれば、男である私が浮気をするのは当然だ。例えば、極端にすると理解しやすいと思うが、地球上に100人しか人間を残せないとしたら、女1に対して、男が99なら、子供は年に1しか生まれない。一方、女99に対して、男1なら、年に99人の子供が生まれる可能性がある。浮気の言い訳にこんな話をする男はいないだろう。いたとしたら馬鹿だ。こんな話に納得する女はいない。
原理原則を勉強すると、真理が分かったような気になる。けれどもそれは勘違いというものだ。
小泉改革のもと、自殺する中高年が増え、日本の将来を担う若者たちは職業に就けないでいる。
労働市場のサプライサイドの変革が必要で、「積極的労働市場政策」とかいうものが必要とか言うけれど、彼らが失っているのは、生きていくために最も必要な「希望」だってことすら、竹中さんには分かっていないのではないかと思う。
さて、この本だが、冒頭の「牛乳瓶のフタ」の経済学は面白かった。うまいなぁと思った。本としてすごく良く出来ている。一読をお薦めしたい。
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