「小田原さん」を救えるのか。
夕方のニュースが元派遣社員の自殺を伝えていた。
日テレ系だったと思う。
帰宅してすぐにつけたテレビで、用事を足しながら見ていたので、確かではない。
自殺した元派遣社員「小田原さん」は、派遣で自動車部品工場に15年間勤務したが、契約満了を理由に部品工場から放り出され、間もなく派遣会社か ら解雇された。今は解雇された後6ヶ月間は寮に留まれるという国の制度があるのだけれども、それを知らなかった元派遣社員は、自分の境遇を悲観して自殺し た。派遣会社は退寮を要求した事実はないとしながらも、国の制度を説明しなかったことは認めた。3年以上勤務した派遣社員は正社員に登用しなければならな いが、派遣会社は、契約内容が変わっているので、正社員登用の条件は満たしていなかったとしている。
伝えられていた内容を要約するとこんなことだったと思う。
このニュースには結構時間が割かれていて、元同僚、行きつけだった居酒屋の女主人、派遣会社の広報担当などに対する取材のVもあった。
用事を足しながらだけれども、あれあれ?と思う部分があった。
製造業への派遣が解禁されたのは2004年である。15年ってのはどういうことなのだろう。
だいたい製造業への派遣は改悪後も1年までではなかっただろうか。
もうひとつ。
3年以上勤務した派遣社員を正社員として派遣先企業が正社員として登用しなければならないというようなルールはあっただろうか?
私の聞き間違いだったのかもしれない。
確認しようと「派遣 自殺」でニュースサイトをチェックしたけれども、該当するニュースはヒットしなかった。
仮に聞き間違いでなかったとしたら、大問題だと思う。
伝えたメディアは訂正をしなければならない。
日テレ系だったとしたら、「バンキシャ」で問題があって、社長が辞任したばかりだ。
取材とそれ電波に乗せるまでのプロセスをチェックする体制はどうなっているのだろう。
あれあれ?と思った部分もあったけれども、「小田原さん」報道には感じるところが多かった。
「小田原さん」は何に幻滅したかが分かるような気がしたのだ。
彼は部屋のカレンダーに製造会社から必要とされなくなった日、派遣会社から必要とされなくなった日を記録していたという。
必要とされなくなる絶望。仲間だと思っていた連中からそれを伝えられる幻滅。
身寄りのなかった「小田原さん」は、派遣元会社、派遣会社の手によって葬儀が行われ、無縁仏として葬られたそうだ。
葬儀には元同僚が参列し、涙で見送った。
「小田原さん」は少なくとも元同僚にとって必要な存在だった。行きつけの居酒屋でも必要な存在だった。
それが少しばかりのなぐさめになる。
セーフティネットが議論されるとき、経済のこととか、職能のこととかが中心になる。
もちろん、それは大切なことだ。けれども、もっと大切なのは、必要とし必要とされる関係なのではないかと思う。
ケアするべきところが違っているのではないかという違和感がある。
自分を必要としてくれる存在がある限り、人はきっと泥水を啜っても生き延びると思う。
自殺を選択する人にはそれがないのではないだろうか。
すべてが政府の責任だとは言わない。けれども、政府は時代の雰囲気については責任がある。
どうすれば、「小田原さん」のような人を、これ以上産まなくて済むのだろうか。
そんなことを考えながら、ビールを飲んでいる私もまた罪びとのひとりだろうか。
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